コドモクリエイターズインク

コドクリマガジン

【インクの授業風景】世界周遊旅行「アゼルバイジャン編」

2018年05月14日

 「もっと知りたーい!!」

 さて、前回は「お医者さん」「宇宙開発」「科学者」を目指す子どもたちが集まったこともあり、未知の国であるロシアを探求することとなりました。

 今回は、もっとたくさん色んな世界を知りたいということで世界各地に寄り道をしていきます。

f:id:kodomocreatersinc:20180514194011j:plain

  全大陸の民族衣装を着た子どもたちの写真を散りばめられました。写真には答えである国名は書かれておらず、どこの国の友達なのか想像しながら思いを馳せていきます。

 ※今回選んだ写真は世界に関心と好奇心をもってもらうことを目的としたものです。子どもたちには偏った見方を持ってもらわないように、授業を通してサポートしております。

 子どもたちは素直で、なんの偏見もなく全てありのままを受け入れていきます。

 「肌が白い!」「眼の色が青い!」「髪が赤い!」「服がフカフカしてる」

 ノルウェー、スウェーデン、ドイツ、ペルー、タイ、ネパール、……

 子どもたちはどこの国の友達なのか教えてもらえないけれど、その友達が何を感じながらどこに住んでいるのか、想像することをやめません。(ひいては目の前にいる人が思っていること、してほしいことを感じられるように育ってもらえればと僕は思いました。)

f:id:kodomocreatersinc:20180514195456j:plain

 突然ですが、読者の皆さんはアゼルバイジャンがどんな国なのかご存知でしょうか? 

 f:id:kodomocreatersinc:20180514200438j:plain

 実はアゼルバイジャンは親日国で、日本語教育も盛んな国です。

 アゼルバイジャンの海であるカスピ海のヨーグルトなんて、日本人の私たちも気付かぬところで食べているものです。

 政治的な理由が絡むため割愛しますが、アゼルバイジャンという国は日本のニュースに一切流れてきません。

 にも関わらず、親日であるからにはもちろん理由もありますが、同様の理由で割愛します。

 そもそも、友達をつくるにあたって政治は重要な問題ではありません。

 なぜアゼルバイジャンの話を出したかというと、子どもたちの関心がその写真に集まったからです。

 さぁ、子どもたちはどこの国の友達なのか考え出します。

f:id:kodomocreatersinc:20180514200622j:plain

 「アラジンみたいな帽子だね」と不意に出た言葉が連鎖して、「わかった、アラビアって国だ」「世界地図でアラビアを探そう!」という流れが生まれました。

 けれどもアラビアは見つかりません。

 そもそもアラビアは国ではなく半島だからです。

 そしてアゼルバイジャンはアラビア半島にはありません。

 その後も答えから遠くなっていくばかりで、脱線ばかりします。実はこれが私たちの望むことです。

 脱線をきっかけとして、それから子どもたちはヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、アジア、中東、オーストラリアを調べることにのめり込んでいきます。

 途中で、本来楽しみにしているオヤツタイムがあったのですが、

 「気になる!答え知りたい!!もっとやる!!!」

 なんて言われてしまえば、大人は暖かく応援させてもらいます。

 さぁ、地図を広げ、図鑑をあさり、世界史を調べさえする。10歳未満の子どもたちが、です。

 中には頭の切れる子がOK,googleiPadに尋ねるものの、答えに行き着くべき肝心のキーワードが思いつかない。

 ついには答えを知っている大人に答えを求めようとする。確かに有効な手段です。

f:id:kodomocreatersinc:20180514195622j:plain

 しかしここからが重要です。

 私たちがすることは魚を与えず、魚の取り方を教えることです。

 だから、子どもたちの質問に無視するわけではなく、しかし答えを直接教えないために「はい」か「いいえ」でしかヒントを与えないこととしました。

 「石油が取れますか?」「はい」「OK,google. 石油が取れる国」

 たくさんの石油産出国を知ることに繋がりました。もちろん答えには辿り着きません。

 「英語は話しますか?」「はい」「OK,google. 英語を話す国」

 とんでもない情報量に出会います。英語が世界でこんなにも話されているのかと発見したようです。

 「自然が豊かですか?」「はい」「OK,google. 自然が豊かな国」

 画像検索により、東京では目にできない光景を目の当たりにします。世界は美しく壮大であることに気が付きました。

 「ヨーグルトが美味しいですか?」「はい」「OK,google. ヨーグルトが取れる国」

 実はカスピ海ヨーグルトのことですが、日本にアゼルバイジャンのニュースが届かないと同様、検索にはヒットしません。けれども代わりにブルガリアという国を知りました。アゼルバイジャンの近隣国なので、身近にあった食べ物が意図せずして答えに大きく近づくきっかけとなったのです。

 「はい」か「いいえ」でしかないヒントだけれど、想像力をフルに活かして答えを追い求め続けます。

 あーでもない、こーでもない。けど、もしかしたら、こうなんじゃないかな? 調べてみようよ!

 繰り返すうちに、メディアリテラシー、つまり検索する能力と、論理的に推理する能力がぐんぐん伸びて、大人も驚かされるほどです。はじめは「こども、ふく」とたどたどしくしか検索できなかった子どもたちが、1時間も経てば、「石油が取れて、自然が豊かで、ヨーグルトが美味しい国!」とズバリGoogle先生に言ってのけます。

f:id:kodomocreatersinc:20180514200934j:plain

 コツを掴むとすぐにこれが「石油が取れて、ヨーグルトが美味しくて、王様がいて、日本より小さい国で、自然が豊かで、……で、……な、そういう国」という、より的確な質問へと変貌していきます。

 Google先生も的確な質問をされれば、それに応えようというもの。

 アプローチさえ間違えなければ、子どもたちが魚の取り方を覚えるのは極めて早いんです。

 f:id:kodomocreatersinc:20180514194512j:plain

 そうして長い長い推理と探求の果てに、ついにはアゼルバイジャンに辿り着くことができました。子どもたちは大喜びです。

 「やったー!」「アゼルバイジャンだったー!」「もっと(この国のこと)見てみようよー!」

 嬉しいことに、探求してきた勢いは止まることなく、さらなる探求へと繋がっていきました。

 私たち大人にとってもこれはとても嬉しい瞬間です。この子たちがこのままのエネルギーで学び続けたらきっと世界を今の想像を遥かに超えて素晴らしいものにしてくれると思わせるほどに、世界を知った子どもたちの眼は輝いていました。

 授業もそろそろ終わらせないといけませんし、締めに入ります。

 それからはというと、どうやらアゼルバイジャンの服は子どもにとってワクワクする衣装が多いようです。ご飯も素敵なようです。

 そういえばアゼルバイジャンはロシアの隣国なんです! 前回、ロシアを探求したラボタイムに繋がることとなりました!

 そして何よりアゼルバイジャンは日本語が通じます。

 ぜひとも子どもたちにはアゼルバイジャンに遊びにいってほしいものです。いえ、願わくば今日出会った写真上の友達に出会いにいって、世界中にたくさんの友達をつくってきてほしいものです。

 なんてことを思っていたらまた「もっと知りたーい!!」と、子どもの声。

 何を知りたかったのか僕にはわかりません。世界のことなのか、その国のことなのか、それとも友達のことなのか、はたまた……

 f:id:kodomocreatersinc:20180514194708j:plain

 今回の授業が、世界の友達を繋げ、より良い世界に至るためのきっかけになることを祈っております。